【感想】欅坂46の「黒い羊」にメンバーの姿が重なって苦しい

欅坂46 8thシングル「黒い羊」

2019年2月1日に、欅坂46の8thシングル『黒い羊』のミュージックビデオ(MV)が公開された。

7th『アンビバレント』が発売されてから約半年ぶりのシングルであり、今泉佑唯、志田愛佳、米谷奈々未の3名が卒業してから初めてのシングルとなる。

表題曲としては過去最高に重く暗い曲なので、聞く人を選ぶと思うが、ここではMVを見た率直な感想をつづっていきたい。

黒い羊の意味

しっとりしたピアノから始まるこの曲は、「黒い羊=はみ出し者」を題材にしており、白羊の群れの中で浮いている黒羊のように、周囲になじめない僕の鬱屈した気持ちや心の葛藤を描いたものになっている。

欅坂46らしい反骨精神のメッセージは感じるものの、これまでの『サイレントマジョリティー』や『不協和音』が前へ前へと立ち向かっていく印象だったのに対して、『黒い羊』は曲自体がかなりしっとりしていて陰鬱とした印象が強い。

こういった寂しい雰囲気の曲は、『エキセントリック』などカップリング曲としてはたまにあったが、今回、表題曲に持ってきたことは新たな試みと言えるだろう。

平手友梨奈が放つ「全部 僕のせいだ」の衝撃

この曲にぐっと引き込まれたのが、平手友梨奈の「全部 僕のせいだ」というフレーズを聞いたとき。正直、このセリフを平手に言わせるか…と思ってしまった。

二人セゾン』までの平手友理奈は、番組などでも明るい笑顔を見せていたし、グループとしての一体感が見てとれた。その時の平手が好きだったし、平手推しになったのもその頃からだったと思う。

ただ、その年が明けたころから、だんだん平手の様子がおかしくなっていった気がする。笑顔を見る機会が減り、「欅って書けない?」に出演する機会も減り、端から見ていて孤高のセンターという印象になっていった。

もちろんグループの裏事情なんて伺い知ることは出来ないので、あくまでメディアを通して受けた印象でしかないが、何となく「平手友梨奈」が欅坂46の中で浮いた存在になっているように感じた。

そんな中で、今泉佑唯、志田愛佳、米谷奈々未の3名が卒業し、なかなか明るい話題を見つけることができなかった。活動休止したメンバーがみな卒業していってしまう現状に、グループとして物悲しさすら感じていた。

そういうバックグラウンドを持って聞いていたせいか、平手友梨奈の「全部 僕のせいだ」という叫びを聞いたとき、ふと僕(黒い羊)と、平手友梨奈や辞めていったメンバーが重なってしまい、この曲自体が今の欅坂46を暗示しているような気がしてしまった。

平手友理奈が、辞めていったメンバーが、もしかしたら白い羊になりきれない、黒い羊だったんじゃないか。仮にこれが彼女たち自身のことだとしたら、こんなに悲しいことって無いだろう…と。

もちろんこれが妄想でしかないことはわかっている。ただ、こうした妄想が湧き出てしまうほどに、メンバーの表情が真に迫っていたし、平手友梨奈の叫びが悲痛に聞こえたんだと思う。

なんだか、ひとつのドラマを見ているような、そんな心の揺さぶられ方をするMVだった。

欅坂46の転換曲となるか

正直、表題曲としては重く暗いため、好き嫌いは別れると思う。MV自体も映像が暗く、メンバーのアップもほとんど映らないので、期待していたものと違うと思った人も多いだろう。

かくいう私も、そろそろ『世界には愛しかない』や『二人セゾン』のように、伸びやかにパフォーマンスするメンバーの姿を見たいと思っているのが正直なところだ。

ただ、この苦しい時期にあえてここまで振り切った曲を出したことは、後々意味を持ってくるような気がする。二期生も加入したいま、この『黒い羊』が欅坂46の転換期となる、そんな曲になってくれれば良いなと思っている。